カギのついていないロッカーじゃ不安

locker_keyロッカーに自分の靴と荷物を放り込んで、そのトビラをバーンと閉めて、振り返りもせず、そしてとてもあっけなく、あなたは歩いていってしまった。
そのロッカーにわたしの「想い」が入っていたなんて、あなたは気が付きもしなかったんでしょうね。その「想い」を書き上げるまで、わたしは三日もかかったっていうのに。そしてそれをあなたのロッカーに入れるまで、さらに一週間かかったっていうのにさ。
きっといま、わたしの「想い」はグシャグシャになって、あなたのロッカーの奥底へ押しやられているんでしょうね。

わたしたちの学校のロッカーにはカギなんて付いていないから、わたしはあなたが来る前に、わたしと同じような誰かがあなたのロッカーを開けるんじゃないかと不安でしかたなくて、あなたが来るまでわたしの「想い」が入ったそのロッカーをずっと見張っていたんだよ。途中何度もその「想い」を取り出そうとして、そしてそれを思いとどまって、あなたに早く来てほしくて、でも来てほしくなくて。
カギのついていないロッカーなんて、ぜんぜん「Locker」じゃないじゃない。

カギのついていないロッカーじゃ不安で、仕方なくわたしはずっとわたしの恋の行方を見守っていたんだ。そして結果はこのザマ。あなたがロッカーのなかのモノに目もくれなかったように、あなたはわたしのことになんて目もくれないんだ。
誰かに見られてやしないかと何度もあたりを見回して、入れたときと同じように、わたしはあなたのロッカーをあけて、奥に手を突っ込んで、あなたがそれと知らずにグシャグシャにしたわたしの「想い」を取り出した。
もしもこのロッカーにカギさえ付いていてくれたなら、わたしはここで馬鹿みたいに、そのトビラを見張っていることもなかったはずなのに。そしてこのなさけない結末を見届ける羽目にならなくてすんだのに。

カギのついていないロッカーなんて大っ嫌い。遠くで授業開始のチャイムが鳴った。